後ろ向き研究が誤解を生みやすい理由――エリスリトール論文を正しく読むために
10年に一度の大寒波とかで、昨日は京都市内に大雪警報が出ていました。
幸い大雪にはならなかったのですが、夜中に降った雪が凍結して、道路はアイスバーンになってます。
ノーマルタイヤで出て来て滑るアホが多いやろなと思い、いつもよりかなり早めに家を出たのですが、やっぱりそこら中で車がスリップしてます。
雪が積もる度に書いてますが、スタッドレスでも滑るのにノーマルタイヤで走れると判断できる根拠が全く理解出来ない、あらてつです。
滑って単独で事故して痛い目みるのは本人の勝手ですが、他人を巻き込んだらなんてカケラも考えないんでしょうね。
話は変わります。
健康や医療のニュースで、
「〇〇を摂っている人ほど、病気が多かった」
という見出しを目にすることがあります。
そして多くの場合、
「じゃあ〇〇は危険なんだ」
という結論に一気に話が飛びます。
今回の
「エリスリトールは心臓病の原因になり得る」
という話は、まさにその典型。
ですが、ここで一度、研究の種類について整理しておく必要があります。
なぜなら、今回の論文は、後ろ向きコホート研究と呼ばれる「誤解が生まれやすい研究手法」だからです。
■救急車とエリスリトールの共通点
とてもわかりやすい例えがあります。
「救急車をよく呼ぶ人ほど、死亡率が高かった」
――このデータを見て、
「じゃあ、救急車は危険だから呼ばない方がいい」
と思う人はいませんよね。
これは当たり前の話で、
- 重症の人
- 命の危険がある人
ほど、結果として救急車を呼ぶ頻度が高いだけです。
救急車は
「死因」ではなく
「重症であることの“結果”」
を反映しているに過ぎません。
実は、今回のエリスリトールの話も、まったく同じ構造です。
論文で示されたのは、
「血中エリスリトール濃度が高い人ほど、心血管イベントが多かった」
という「関連」です。
ですが、ここから
「エリスリトールを摂ったから心臓病になった」
とは、論理的には一切言えません。
因果が逆転している可能性
今回のケースでは、むしろこう考える方が自然です。
もともと
- 肥満
- 糖尿病
- インスリン抵抗性
- 心血管疾患リスクが高い人たちが
- 体重や血糖値を気にして
- 砂糖を避け
- エリスリトールを使った商品を選んでいた
つまり、
「エリスリトールを使ったから病気になった」のではなく、「病気のリスクが高い人ほど、エリスリトールを選んでいた」
この可能性を、この研究デザインでは排除できません。
■後ろ向き研究の限界
今回の論文は『後ろ向きコホート研究』と呼ばれる手法です。
これは、
- 過去のデータを集め
- すでに起きた出来事を
- 統計的に解析する
という研究です。
この方法は
「仮説を立てる」
「関連性を見つける」
には役立ちますが、
因果関係を証明することはできません。
救急車の例と同じで、「原因」と「結果」が簡単に入れ替わってしまうからです。
「論文が出た=危険」ではない
医学の世界では、
- どんな研究か
- どのレベルのエビデンスか
- 因果関係を示せる設計か
を必ず確認します。
今回の論文は、
- 興味深い
- 参考にはなる
しかし、
「エリスリトールが心臓病の原因だ」と結論づけられるレベルではありません。
これはEBM(根拠に基づく医療)の基本中の基本です。
大切なのは「構造を見る目」
数字や論文タイトルだけを見ると、
不安になる気持ちはよくわかります。
ですが、
- 何を調べた研究なのか
- 何が言えて、何が言えないのか
ここを冷静に切り分けることが、健康情報に振り回されないためには欠かせません。
エリスリトールの話も、救急車の話と同じ。
「一緒に増えている」ことと「原因である」ことは、まったく別物なのです。
くれぐれもご注意ください。
